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車を売却するために、必要な書類を準備している方もいるかもしれません。整備記録は、必須ではないものの提出書類のうちの一つとなっていることが多く、あると査定額が高くなる可能性もあります。
この記事では、整備記録とはどのような書類なのか、売却時に整備記録があったほうが良いと言えるのはなぜなのか、解説していきます。
車の整備記録とは?
車の整備記録の正式名称は「定期点検整備記録簿」です。
その他にも「記録簿」「点検記録簿」「分解整備記録簿」と呼ばれることもあります。
また、メーカー保証書と定期点検整備記録簿をセットにして「メンテナンスノート」と言われることもあります。
定期点検整備記録簿は、24ヶ月点検や12ヶ月点検といった法定点検で、どのような整備を行ったか、その内容を記録する用紙です。
定期点検整備記録簿を確認すれば、以前どのような整備や修理を行っているかが分かります。また、整備記録の内容から、いつ消耗部品の交換が必要となるか時期を見定めることもできます。
そのため、車を売却する際は、車の状態を把握するための重要な書類です。
整備記録の記載内容
実際に定期点検整備記録簿にはどのような内容が記載されているのでしょう?
定期点検整備記録簿の点検項目は、全部で56個あります。
点検項目のチェック欄に、正常・修理・交換などのマークが記載されています。
正常(良好)なら「✓」、修理であれば「△」、「交換」の場合には「×」が記載されます。
なお、調整は「A」、清掃は「C」、省略は「P」、分解は「〇」、締付は「T」、給油は「L」です。
車によって点検項目は異なっているため、56項目全てにチェックが入るわけではありません。そのため、該当なしであれば「/」が記載されます。
また、タイヤの残り溝を記入する欄や、その他いくつかの点検項目やメンテナンスに関するアドバイスを記載する欄もあります。
それぞれの点検項目については、下記で説明します。
エンジン・ルーム点検の項目と内容は以下です。
ベルトの緩み、損傷/取付けの緩み/オイルの漏れ、量
スパーク・プラグの状態/点火時期/ディストリビュータのキャップの状態
ターミナル部の接続状態/電気配線の接続部の緩み、損傷
排気ガスの状態/エアクリーナーエレメントの状態
ファンベルトの緩み、損傷/冷却水の漏れ
燃料漏れ
メターリングバルブの状態/ブローハイガス還元装置の配管の損傷/燃料蒸発ガス排出抑止装置の配管等の損傷/燃料蒸発ガス排出抑止装置のチェック、バルブの機能/チャコールキャニスタの詰まり、損傷/触媒等の排出ガス減少装置の取付けの緩み、損傷/二次空気供給装置の機能/排気ガス再循環装置の機能/減速時排気ガス減少装置の機能/一酸化炭素等発散防止装置の配管の損傷、取付状態
室内点検の項目と内容は以下です。
操作具合
遊び、踏み込んだ時の床板とのすき間/ブレーキの効き具合
引きしろ(踏みしろ)/パーキング・ブレーキの効き具合
遊び、切れた時の床板とのすき間
足廻り点検の項目と内容は以下です。
ホイールアライメント
損傷、オイルの漏れ
取付部、連結部の緩み、ガタ、損傷
ディスクとパッドとのすき間/ブレーキパッドの摩耗/ディスクの摩耗、損傷/ドラムとライニングとのすき間/ブレーキシューの摺動部分、ライニングの摩耗/ドラムの摩耗、損傷
液漏れ/機能、摩耗、損傷
タイヤの状態/ボルト、ナットの緩み/フロントホイールベアリングのガタ/リヤホイールベアリングのガタ
下廻り点検の項目と内容は以下です。
漏れ
取付けの緩み
緩み、ガタ、損傷/ポールジョイントのダストブーツの亀裂、損傷
オイルの漏れ、量
連結部の緩み/ドライブシャフトのユニバーサルジョイント部のダストブーツの亀裂、損傷
オイルの漏れ、量
漏れ、損傷、取付状態
取付けの緩み、損傷/マフラの機能/遮熱板の取付けの緩み、損傷
外廻り点検の項目と内容は以下です。
緩み、損傷
整備記録で特に確認されるポイント
定期点検整備記録簿には何が記載されているのかを見てきました。
では、中古車買取業者だけでなく、その後に車を実際に購入しようと検討する方は、整備記録の何を確認すればいいのでしょう?
購入を考えている方は、以前の所有者が車をどのように扱っていたのか、また今の車がどのような状態なのかを知りたいと思うはずです。具体的なポイントを以下で解説します。
定期点検整備記録簿から確認できるポイントの一つは、「指定工場」または「認証工場」で点検されているかどうかです。
定期点検整備記録簿には工場の認証番号か指定番号、整備をした事業所の名前、整備士の名前を記載する欄がありますので、それを確認しましょう。
「認証工場」とは、車の分解整備を地方運輸局長が許可している工場のことです。整備工場やスタンドで認証を受けているところがあります。
「指定工場」とは、指定自動車整備事業の認可を地方運輸局長より受けている工場のことです。認証工場の中でも、技術・設備がある一定の基準を満たしている工場になります。民間車検場やディーラーの工場が指定工場に該当します。
認証工場、指定工場どちらも国家2級の整備士を有しています。
なお、定期点検整備記録簿は、どの整備工場で点検を受けても入手することは可能です。しかし、分解整備については認証工場か指定工場でしか行うことはできません。
車を買う側からすれば、認証工場、指定工場でしっかり整備されている車は、認証や指定を受けていない工場で整備された車より信頼ができ、安心だと考えるでしょう。
どのような部品を交換しているのかも、定期点検整備記録簿から確認できる項目の一つです。
整備記録からは、定期的な消耗品の交換なのか、それとも故障によるものなのか、はたまた事故の修理で交換しているのか、ある程度推察することができます。
エンジンオイルやブレーキパッドなど油脂類の消耗品が交換されている場合、それほど問題はないでしょう。
特に、エンジンオイルの交換の目安は半年に一度となっています。エンジンオイルが交換されていない場合にはトラブルが発生することも考えられるため、よく確認されるかもしれません。
もし点検ごとに油脂類の消耗品が交換されているのであれば、むしろ安心です。
また、走行距離が50,000km以下であるにもかかわらず、下廻りやエンジンの内部で修理がされている場合には、その修理がなぜ行われたのか、故障なのか事故が原因なのかを詳しく確認されるかもしれません。
整備記録があると売却に有利となる理由
整備記録があるとなぜ車を売却する際に有利になるのでしょう?
これまで見てきたように、認証工場や指定工場でしっかり記入された整備記録があれば、どのような点検・整備が行われてきたのかを確認することが可能です。きちんと整備されていることは、自分が大切に車を扱ってきたという証明にもなります。
また、メンテナンスを適切に行っていたかどうかで、車の耐久性は大いに変わってきます。車の状態が良く、その上整備記録も揃っているとなれば、思っていたよりも高額の査定が期待できるかもしれません。
一般的に、車を買う場合に限らずどんな製品であっても、安全であることの証明があれば安心して購入することができます。
そのような意味で、定期点検整備記録簿によって証明できる車は売却時に有利になるのは当然のことと言えます。
整備記録がない場合に不利となる理由
整備記録があると車を売却する際に有利になりますが、ない場合にはどのように不利になるのでしょう?
これまで見てきたような整備記録で確認したいポイントが、整備記録がないと全く確認できないことになります。そのため、実際にはしっかりメンテナンスをしてあったとしても証明ができず、整備記録がある場合よりも高額の査定は期待できません。
車の売却を考えるのであれば、整備記録をしっかり保管しておくことは大変重要です。
以下では、整備記録がない場合に疑われてしまうポイントを3つ説明します。
定期点検整備記録簿がない場合に疑われやすいのは、水没車、事故車であるためにそれを隠そうとしているのではないかということです。
整備記録があれば、走行距離からすると不自然と思える修理箇所や、普通に使用していただけではありえないような整備箇所を見つけることが可能です。整備記録があれば、水没車でも事故車でもないことが証明できます。
整備記録がない場合、痛くもない腹を探られてしまうというようなことにもなりかねません。
整備記録がない場合、他に疑われる点として考えられるのは、メーター戻しをしているのではないかということです。
メーター戻しをして走行距離をごまかしている車は以前より見かけなくなってきたとはいえ、全くいないとは言い切れません。
中古車を購入する際、走行距離を気にかける方も多いでしょう。自分の売ろうとしている車のオドメーター(走行距離計)が古い機械式の車種である場合には、メーターを戻すことがそれほど困難ではないため、疑われやすいと言えます。そのため、整備記録がない場合には、特に注意されてしまいます。
なお、売却予定の車の走行距離計がデジタルの場合には、メーターを戻すことはかなり難しいため、それほど疑われずに済むかもしれません。
整備記録がないと疑われる点のもう一つは、法定点検や整備を行っていないのではないかということです。
法定点検が行われていないのであれば、車が粗雑な扱いを受けており、メンテナンスもされておらず不具合もそのままになっている可能性があると考えられてしまいます。
また整備記録がない場合、たとえ整備を行っていたとしても認証工場、指定工場以外の一般の整備工場で行われたのではないかという疑いを持たれることにも繋がります。
仮に本当は認証工場、指定工場できちんと整備してあったとしても、証明ができないのであれば意味がなくなってしまうでしょう。
なお、一般の整備工場であっても、定期点検整備記録簿を非公式で発行しているところもあります。しかし、その場合には認証番号や指定番号の記載がされていないことが多いです。
整備記録を紛失した場合
定期点検整備記録簿を紛失してしまった場合は、どうすれば良いのでしょう?
基本的に、定期点検整備記録簿は再発行することができません。ただし、ディーラーにデータが残っていた場合には、再発行してもらえるケースもあるようです。
紛失したからといって諦めずに、まずは車を購入したディーラーに確認することをおすすめします。
定期点検整備記録簿は、新車時から発行されたものが全て揃っていることが理想です。最新のものだけあれば良いだろうと過去の分を捨てたりすることは決してしないようにしましょう。
自分が現在乗っている車が中古車であった場合にも、以前の所有者の整備記録が残っているのであれば、きちんと保管をしておくことは重要です。
しかし、買った時から整備記録がついていなかった、という場合もあるでしょう。
もし新車の際の販売店が分かる場合は、再発行の依頼ができる可能性があります。しかし、10年以上経過している古い車であればデータがなくなっていたり、そもそもお店自体がなくなっていたりするケースもあるため、あまり期待はできません。
以前の所有者の整備記録がない車を売却しようとする場合には、自分がなくしたのではなく、元からなかったことを中古車買取業者にあらかじめ伝えておくことが大切です。そうすれば、無用な不信感を与えずに済みます。
整備記録を提出する前に気をつけること
以前は点検整備記録簿に個人情報の記載があったため、個人情報の流出が気になる方もいたと思います。
現在は個人情報保護法により、車体番号のみで管理されています。そのため、次の所有者に元の所有者の個人情報が洩れることはありません。
ただし、もし自分で点検整備を行った場合には注意が必要です。整備記録には整備者の氏名・住所の記載欄があり、そこに個人情報が残っているかもしれません。
しかし、この個人情報は切り取ることができます。車を査定してもらうときに買取業者に確認してみてください。
また、個人情報という意味ではその他の書類にも注意が必要です。例えば、整備時の明細やレシートなどを整備記録と一緒にしてあるかもしれません。その書類には氏名、住所、クレジットカード番号などの個人情報が記載されている可能性があります。
中古車買取業者に提出する書類の中に、個人情報が記載された提出不要な書類が混ざっていないかを確認しましょう。
車を引き渡す前にも、車の中に個人情報の記載された書類が残っていないかどうか、しっかりチェックすることをおすすめします。
その他売却時に準備が必要な書類
定期点検整備記録簿は、メーカー保証書とセットで「メンテナンスノート」とも呼ばれています。
このメンテナンスノート以外に、車の売却時に必要となる書類は下記の通りです。
自動車検査証(車検証)
自賠責保険説明書
リサイクル券
振込口座情報
自動車税納税証明書
実印
印鑑登録証明書2通
譲渡証明書
委任状
軽自動車税納税証明書
認印
売却手続きを進める前に、これらの書類がきちんと揃っているかどうかをしっかり確かめておきましょう。
また、姓や住所が変更されている場合には、以下の書類も追加で必要になってきます。これらは普通自動車、軽自動車どちらの場合でも同じです。
結婚や離婚で姓が変更された場合に必要
印鑑登録証明書と他の書類の住所が違っている場合に必要
2回以上引っ越しを行っている場合に必要
複数回引っ越しを行っている場合に必要